e-Tax不正還付事件に見る“性善説”の限界

最近、衝撃的なニュースを目にしました。
「e-Taxを不正利用した組織的な詐欺事件が発覚。17歳の少年を含む10人が逮捕され、被害額は現時点で約576万円、関与者は数百人規模、被害総額は数億円にのぼる見込み――」というものです。
所得税の不正還付は昔からある手口ではありますが、これだけ大規模かつ組織的に行われていたとなると驚きです( ゚Д゚)
e-Taxは、便利で効率的な申告ツールとして納税者の間で広く活用されています。しかし、それが悪用されるリスクと常に背中合わせであることも、今回の件で改めて浮き彫りになったのではないでしょうか?
目次
性善説の限界
所得税の申告制度は“申告納税制度”と呼ばれ、基本的には納税者自身が正しく申告するという性善説に基づいて成り立っています。
令和6年分の確定申告件数はおよそ887万件にも上るとされており、確定申告時期は流れ作業で処理されその1件1件を税務署がすべて精査することは現実的には不可能です。後に調査対象になるものもありますが、その件数、割合は極わずかです。
今回のような不正還付においてよく見られるのは、以下のような手口です:
- 事業収入に対する多額の源泉徴収を偽装し、過剰な還付を受ける
- 高額な医療費を支払ったと虚偽申告し、医療費控除による還付を得る
どれも、真面目に申告している人から見れば到底許される行為ではありません。
たとえ裏で誰かが指示していたとしても、最終的に税務当局から追及され、申告者本人が追加納税を求められるのは避けられないのです。
不正は“バレる”時代へ:小さな違和感が突破口に
今回の事件に限らず、不正な手段によって納税額を圧縮するケースは後を絶ちません。今も昔も変わりません。所得税に限らず全ての税目においてほんの少しの小さな違和感が不正把握の端緒になるのです。
今回の事件、不正還付把握の端緒がどこにあったのか分かりませんが、今回の事件で注目したいのは、「17歳の少年が関与をしていた」という点です。仮に17歳の少年が多額の収入を得て、多額の還付を受けていたというのは違和感でしかありません。たった1件の不正還付事案がきっかけで、全国で申告内容を精査した結果どうようの不正手口把握されたと考えられます。
これからの時代、税務調査や審査はAIやデータ分析技術を用いた“傾向と対策”のような手法に進化していくでしょう。
申告制度は性善説に立脚しているからこそ、個人の良心と正確な知識が問われます。
「バレなければ得」ではなく、「いつか必ずバレる」ものだという認識を持っておくことが、私たちの社会にとっても、そして自分自身を守るためにも、非常に大切なのではないでしょうか。