消費税減税は実現するのか――衆院選後に税理士が注視すべき論点
衆議院選挙では、主要政党がそろって消費税減税を掲げ、特に自民党が初めて公約に明記した点は大きな転換と言える。
高市首相も「悲願」と表現し、超党派による国民会議で制度設計を進める姿勢を示してきた。ただし、実現までのハードルは決して低くない。税理士として注目すべき点を整理する。
目次
食料品ゼロ税率が抱える構造的な問題
自民党と日本維新の会は、食料品について「2年間に限り消費税の対象外とする」ことを検討すると公約に明記した。物価高対策としては分かりやすい施策だが、実務面では課題が山積している。
消費税は社会保障財源であり、食料品をゼロ税率にすれば年間約5兆円の税収減となる。代替財源が不透明なまま実施すれば、財政悪化への懸念から金利上昇を招く可能性がある。また、支出額の大きい高所得者ほど減税効果が大きくなる点も、再分配政策としては弱点だ。
さらに、2年限定措置の場合、終了時に税率を戻せば「実質増税」となり、政治的にも実務的にも混乱が生じやすい。
給付付き税額控除という“理論上の最適解”
首相が目指すとされる「給付付き税額控除」は、低所得者ほど恩恵が大きくなる点で理論的には合理的だ。ただし、日本では導入実績がなく、制度設計は極めて複雑になる。
所得把握の精度、給付タイミング、事務コストなど課題は多く、短期間での実装は現実的とは言い難い。政府・自民内でも、消費税減税はあくまで「つなぎ措置」との認識が強いが、その間をどう設計するのかは見えていない。
税理士としては、制度が導入された場合の申告実務・顧問先対応を想定し、早期に論点整理をしておく必要がある。
税理士が今、顧問先に伝えるべきこと
現時点で重要なのは、「減税が決まった前提」で動かないことだ。党内慎重論は根強く、国民会議での意見集約も容易ではない。野党間でも具体策に大きな違いがあり、制度の着地は不透明だ。
顧問先には、
・現行制度が当面続く前提で経理・価格設定を行うこと
・軽減税率やインボイス制度への対応を優先すること
・政治動向に振り回されすぎないこと
を冷静に伝えるべきだろう。
消費税減税は「分かりやすい政策」だが、「実行が難しい政策」でもある。税理士には、期待と現実を切り分けて説明する役割がこれまで以上に求められる。
【編集後記】
これからの自民党の政策に期待しています。