役員賞与を高額に設定する理由

役員報酬と役員賞与

通常、役員報酬は定期同額です。何故ならば、そうしないと税法上経費にならないからです。また役員賞与については基本税法上の経費にはならないのですが、事前確定届出給与という書類を税務署に提出することで(正確にはもっと細かい要件がありますが、そこは横に置いておきます)経費にすることができます。

さて、最近、私のクライアントで役員賞与を支払いたいとの相談があります。

では、なぜそうした相談が増えたのでしょうか?少し紐解いていこうと思います。

社会保険料に大きな違いが。

役員報酬は、通常、定時株主総会や取締役会において年額が決定され、その額を12か月に分けて支払う形をとることが一般的です。

ただ、この方法だと高額の役員報酬を受領している場合、社会保険料の負担が相当な額になります。

【事例1】

役員報酬を年額840万円と設定した。

➀ 月額70万円 × 12月 =840万円
  社会保険料 1,217,232円
② 月額35万円 × 12月 = 420万円
  賞与 420万円
  社会保険料 1,036,062円
③ 月額20万円 × 12月 = 240万円
  賞与 600万円
  社会保険料 837,333円

同じ840万円を支給するにしても、①と②で38万円もの差が生じます。法人の社会保険料負担額も加味すると76万円の削減に繋がります。

なぜ、社会保険料に差が生じるのか?

これは、賞与における厚生年金保険料の計算方法に起因します。賞与の厚生年金保険料の計算は標準賞与額をベースに計算されるのですが、この標準賞与額の上限が150万円に設定されているため、それ150万円以上支給しても負担する保険料の額が変わりません。

したがって前述したとおり役員に対し賞与を支給することで社会保険料の負担を軽減することができ、実質手取り額が増えるという事になります。

法人税&所得税は増える

社会保険料の負担が減るということの反対側に法人税と所得税は増える事になります。

これは、社会保険料の1/2は会社が負担していること、つまり個人の社会保険料の負担が減少する=法人の負担する社会保険料の負担も減少するからです。38万円の負担減なら法人税の実効税率を30%と仮定して11.4万円の負担増になります。

また、個人の所得税の計算においても社会保険料の負担が減少する=社会保険料控除が減少することになり所得税、住民税の負担が増加します。仮に所得税率が20%、住民税率が10%だとして法人税同様に11.4万円の負担増になります。

それでも社会保険料の負担減少額76万円に対し税負担の増加が22.8万円なので50万円以上の削減になるということです。

まとめ

今回は実際にクライアントから相談された事例を基に計算してみました。最近ではSNSの影響でこのような情報が溢れています。

ただ、税務署のOB&税理士の立場から「これはやばいね」と思う動画も多々あります。納税者の方にはしかっりとした情報収集を行って正しい処理をしていただきたいものです。

【編集後記】

私のところにサンタクロース🎅は来ませんでした。

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