給与所得控除とその闇を解説

給与所得控除とは?

給与所得者(会社員やアルバイトなど)の給与から一定額を差し引いて、課税対象となる所得金額を算出するための控除のこと、この控除は、給与所得者が仕事に関連して発生する必要経費を一律に認めているものです。

ですが、この給与所得控除が本当に理屈にあっているのか解説します。

本当に必要経費なのか?

給与所得控除の額は次表のとおりです。

国税庁HPより引用

例えば、給与所得控除の最低額は550,000円で、給与収入が1,625,000円までは一律の550,000円を必要経費相当額を控除できるのです。

待て待て、給与所得者ってそんなに経費係るのか?という疑問があります。給与所得者の必要経費が何なのか?という疑問もありますが、私の経験上、そこまで経費は掛かりません。

給与所得者は所得が全て把握されて事業所得者と比較して不公平だと言われますが、給与所得者も十分優遇されているのです。

諸外国と比較しても優遇されているのです。

税は理屈の世界

自民党の宮沢洋一氏が「税は理屈の世界」という発言がありました。この発言と同時期に与党税制改正大綱において給与所得控除額を100,000円引き上げると明言されました。

さて、前述したとおり給与所得控除の趣旨は、給与所得者が仕事に関連して発生する必要経費を一律に認めているものです。給与所得控除額を100,000円を引き上げるのに宮沢氏がいうところの「理屈」があるのでしょうか?

特定支出控除を活用すれば良し

給与所得者が次の1から7の特定支出をした場合、その年の特定支出の額の合計額が、給与所得控除額の2分の1相当額を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度があります。

1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)

2 勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)

(注) 2の支出については、令和2年分以後、特定支出の対象となります。

3 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)

4 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)

5 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)

6 単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)

7 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)(勤務必要経費)

(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための支出(図書費)

(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出(衣服費)

(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

なお、これらの7つの特定支出は、いずれもその支出がその方の職務の遂行に直接必要なものであることについて給与の支払者またはキャリアコンサルタントによって証明がされたものに限られます。

つまり、所得税法上、給与所得控除の上限を上げなくても、給与所得者の支出を経費にする制度を設けているのです。

私が公務員時代に特定支出控除の適用ができないかと検証してみたことがあります。1~4は実費で支給されます、5はなくて6,7で計算してみましたが、とても給与所得控除額を上回ることはありませんでした。

つまり、よほどのことがない限り特定支出控除を活用することはないのです。逆に言うと、給与所得者それだけ優遇されているということなのです。

上限を100,000円引き上げることに反対ではない

給与所得控除額を100,000円引き上げることに反対ではない。これで税負担が少しでも減るのであれば手取りが増えることは事実だからです。給与所得がある私にとっても+だしね。

ただ、やっぱり気になるのは、そもそもの制度の趣旨と乖離していることが納得がいかなと思うのは私だけでしょうか?

【編集後記】

2024年も最後の週になりました。残り5日間しっかりと仕事します。

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