「永遠の旅人」をめぐる税金について考えてみたという話です。
「永遠の旅人」・・・エレファントカシマシの歌ではありません。
ひと昔前だと「大橋巨泉」(昭和の人ならわかるはず)「中田英寿」(サッカー選手)及び経営相談を主な業務
簡単に説明すると、生活の本拠地が複数の国にある人のことを指します。
なぜ、このブログでこの言葉を取り上げるのか?それは非常に悩ましい問題だからです。
その問題について整理したいと思います。
目次
居住者と非居住者
所得税法では「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。
したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。
いつも思いますが「客観的事実」とかって曖昧ですよね。
さて、ここで「永遠の旅人」と呼ばれる人たちの生活の中心はどこにあるのでしょうか?
実は、税法では明確な基準が示されていません。世間ではいわゆる183日ルールというのがありますが、そうは簡単に整理できません。
なぜなら11月から2月は香港で過ごし、3月から6月は日本で、7月から10月まではシンガポールで生活をしている人がいたら、さて、どうなるでしょう。
この永遠の旅人はどこの国の居住者になるのでしょうか?ひょっとしたらどの国の居住者でもなく、どの国から見ても非居住者になってしまうのでしょうか?
参考:国税庁HP 居住者と非居住者の区分
そもそも居住者と非居住者で税金が違うの?
居住者は、所得が生じた場所が日本なのか外国なのか関係なく、全世界のすべての所得について日本で税金を納める必要があります。
一方、非居住者は日本国内で生じた所得に限って所得税を納める義務があります。
そうです。居住者と非居住者では所得税の取り扱いが違うんです。
日本の居住者なら香港の所得であろうがシンガポールの所得であろうが全ての所得について日本で税金を納める必要があるが、非居住者なら日本の分だけで良いということです。
ちなみに香港やシンガポールは日本より税率が低い国なのです。
村上ファンドの村上世彰氏はシンガポール在住です。税率が低いからかな。
国税も黙ってみてはいない
ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。と規定しています。
やっぱり「客観的事実」かって感じです。
国税庁のHPでも「1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。」と記載があります。
国税当局も本気です。
参考:国税庁HP 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)
まとめ
居住者になるか?非居住者になるか?
「住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断」
この文言には、それはそれは国税当局の熱い思いが詰まっているのが見えてきます。
それは、なんとかして日本の居住者にして日本に税金を納めてもらおうという思い。
ゆえに「客観的事実」を集めて居住者にするのです。
場合によっては、日本でも居住者、あっちの国でも居住者ってことになる場合もあるかもしれません。その場合、二重課税になってしまうので2国間の租税条約に基づき相互協議というもので調整するんだそうです。
いずれにしても私のような一般人には関係ない話ですが、お金持ちは考えることが違うなあと思う今日この頃です。