AIに仕事を奪われる? 会計業界の未来と税理士が取るべき戦略

近年、AIの進化は目覚ましく、特に会計・税務業界でも「AIに仕事を奪われるのでは?」という不安の声が上がっています。実際に私自身、税務署に勤務していた頃、「10年後になくなる仕事」として会計事務所が取り上げられていたのを思い出します。では、AIによって税理士の仕事は本当に不要になるのでしょうか?その現状と、今後私たちが取るべき姿勢を考察していきます。
目次
会計業界におけるAIの進化と実例
最近のAIの進化は目を見張るものがあります。たとえば、freee会計のデータをGAS(Google Apps Script)を使ってGoogleスプレッドシートに出力し、それをAIに読み込ませて自動分析させる手法が紹介されました。実際に私が参加した会計業界のイベント「マジカチ」でも、こうしたAI活用法を披露する税理士の先生が登壇されており、その自動化レベルの高さに驚かされました。
さらに、預金通帳の画像をAIに読み込ませ、freee会計にインポート可能なCSV形式に自動変換させるツールも登場しています。こうしたツールは、これまで人間が手入力していた作業を短時間で、しかも正確にこなしてしまいます。
AIにはできない税理士業務の本質とは?
では、本当に税理士業務がすべてAIに代替されてしまうのでしょうか?私は「決してそうではない」と考えています。理由は大きく2つあります。
まず1つは、複雑な会計仕訳には高度な判断力が必要であることです。単純な売上や経費であればAIでも処理可能ですが、合併や資本取引などの複雑な取引については、状況を理解し仕訳を構築する高度な専門知識と判断が求められます。
もう1つは、税法の改正とその解釈への対応です。税法は毎年改正され、その都度、適用方法や解釈も変化します。AIは過去の情報に基づいて判断するため、最新の法改正にはタイムラグがあり、柔軟な対応が難しいという課題を抱えています。
税理士が生き残るために今こそAIとの共存を
AIは確実に会計業界へ浸透しており、もはや無視できない存在です。しかし、AIを「脅威」と見るのではなく、自分たちの業務を補完・拡張するパートナーとして活用する視点が必要です。
入力や集計といった定型業務はAIに任せ、人間は「判断」や「提案」といった付加価値の高い業務に集中することで、顧客への貢献度をさらに高めることができます。今後は「AI×税理士」という新しい価値の創造が、業界で生き残るカギとなるでしょう。
AIは会計業界を大きく変えつつありますが、税理士の仕事が完全に奪われることはありません。むしろAIと共に進化し、より価値あるサービスを提供する姿勢が、この税理士界隈で生き残る唯一の方法なのかもしれません。
【編集後記】
本日は、税理士会松本支部の定期総会があります。理事として初の定期総会ですが、長い1日になりそうです。