防衛増税のニュースで思い出した、2003年「たばこ税説明会」の悪夢
最近、ニュースで「防衛財源をまかなうためのたばこ税増税」という言葉をよく耳にします。2027年から3年連続で値上げされ、いよいよ1箱700円時代へ突入するというロードマップを見て、私はある「強烈な記憶」がフラッシュバックしました。
それは、私が税務署に入って最初に直面した2003年(平成15年)のたばこ税増税のこと。当時、現場で開催された事業者向けの説明会は、まさに前代未聞の「修羅場」だったのです。
今回は、今だから語れる当時の大混乱の裏舞台を、3つの項目で振り返ります。
目次
前代未聞の事態!「値上げするたばこ」と「据え置くたばこ」の激突
2003年の増税がなぜあそこまで荒れたのか。それは、タバコ業界の勢力争いに税務署が巻き込まれたからでした。
通常、増税といえばすべての銘柄が一斉に値上がりするものです。しかしこの時、日本たばこ(JT)が値上げに踏み切った一方で、なんと外国たばこメーカー(フィリップモリスなど)の一部が「価格を据え置く」という奇策に出たのです。増税分のコストを自社で被ってでも、JTからシェアを奪おうというビジネス上の大勝負でした。
この「足並みの乱れ」が、現場を未曾有のパニックに陥れることになります。
怒号が飛び交う説明会と、上司の「敵前逃亡」
増税に伴い、税務署では地元の小売店や自動販売機業者を集めた「説明会」を開催しました。当時は今のようにオンライン申請(e-Tax)が普及していない時代。会場は普段税務に慣れていないご高齢の店主や、対応に追われる業者で超満員でした。
幕が開くと、事業者側からは怒号に近い質問が浴びせられました。 「なんで同じ税金なのに上がるやつと上がらんやつがあるんだ!」「自販機の設定はどうすればいい!」
さらに実務をややこしくしたのが「手持品課税(在庫への課税)」です。価格が据え置きの外国たばこであっても、税金自体は上がっているため、お店にある在庫を数えて申告・納税しなければなりません。「値上げしないのに、なぜ税金を払うんだ」という理不尽への怒りが税務署に集中しました。
質問という名の糾弾がピークに達したその時、信じられないことが起きました。事業者からの厳しい追及に答えに窮した当時の私の上司が、なんと会場から席を外したまま戻ってこないという「敵前逃亡」を図ったのです。残された現場の職員たちでなんとか場を収めましたが、あの時の冷や汗と剥き出しの怒気は、今でも脳裏に焼き付いています。
歴史は繰り返すのか?現代の「防衛増税」に思うこと
あれから20年以上が経ち、時代は令和の「防衛増税」へと向かっています。
今回は2003年のようなメーカー間の足並みの乱れは起きない見込みですが、現場の税務署や小売店が「手持品課税」の手続きで再び慌ただしくなることは間違いありません。法改正のシワ寄せは、いつの時代も最前線の現場にやってきます。
ニュースの画面越しに「たばこ増税」の文字を見るたび、私はあの説明会の熱気と、逃げていった上司の背中をふっと思い出し、現役の職員の皆さんに心の中でエールを送っています。