詐欺で得たお金にも所得税がかかるの?

近、大学の元重量挙部監督が入学予定者の保護者から学費を不正に徴収し、約10年間で計約3800万円をだまし取ったというニュースを目にしました。詐取したお金はスーツや高級外車のコーティング、香水、ブランドバッグの購入などに使われていたとのこと。こうした事件を見ると、ふと疑問に思うことがあります。「違法に得たお金にも所得税ってかかるの?」
結論から言えば、かかります。 ではなぜそうなるのか、税法の視点から見てみましょう。
目次
違法行為でも「利益」なら課税対象
所得税法では、課税の対象となるのは「所得」、つまり個人が1年間に得たすべての利益です。これには、仕事の報酬や不動産収入だけでなく、実は不正に得た金銭も含まれます。
法律的には、所得税法第9条に「非課税所得」が列挙されていますが、そこに詐欺や横領などで得たお金は含まれていません。つまり、どれだけ不正な方法で手に入れたお金でも、税務上は「利益が出た」と見なされれば課税対象となるのです。
「違法か合法か」ではなく、「利益かどうか」が税の判断基準ということです。
自ら申告する人はいないが…
もちろん、詐欺で得たお金を堂々と確定申告する人はまずいないでしょう。そのため、実際には別の事件(刑事事件など)をきっかけに税務当局が動くというパターンが多いです。
税務署は、警察からの情報提供やマネーロンダリングの兆候などから脱税の疑いを察知し、課税処分を下すケースがあります。その際、申告していない違法所得については、重加算税や延滞税が課されることもあります。
返金したらどうなるの?
もし後になって、だまし取ったお金を返還した場合、その返金は「損失」として処理できることもあります。ただし、返した年に必要経費や損失として計上できるかどうかは、ケースによります。
しかも、ほとんどのケースでは詐取金は既に使い果たしているため、「返したくても返せない」状態になっているのが実情です。税金だけが後から重くのしかかる…という最悪の結末も少なくありません。
詐欺などの違法行為で得たお金も、税法上は「所得」とみなされ、所得税の課税対象となります。合法か違法かではなく、「利益があったか」で判断されるのが税の世界です。
ニュースを見て驚くだけでなく、私たち自身も「詐欺に騙されない知識」や「お金に関する基本ルール」を知っておくことが、身を守る大事な一歩なのかもしれません。
【編集後記】
信州も梅雨入りしました。