「賞与の給与化」で社会保険料はどう変わる?実際に試算してみたという話

最近、「賞与をやめて、その分を月給に上乗せする企業が増えている」というニュースを目にしました。いわゆる“賞与の給与化”です。企業にとっては、採用競争力の強化や、年俸制への移行を目的とした動きのようですが、中小企業の経営に関わる私としては、もっと現実的な視点――「社会保険料の負担がどう変わるか」が気になります。

今回は、架空のモデルケースでシミュレーションを行い、どちらが労使にとって得かを試算してみました。

「賞与の給与化」とは?中小企業にとってのリアルな問題

まず、「賞与の給与化」とは、従来年2回などに分けて支給していた賞与を廃止し、その分を毎月の基本給に組み込むというものです。企業側には、給与を高く見せて求人に強くなるという利点があるほか、年俸制の導入や人件費の平準化というメリットもあります。

しかし、中小企業にとっては、それ以上に大きなテーマが「社会保険料の増減」。給与や賞与の支給方法が変わることで、労使双方の保険料負担が大きく変わる可能性があるのです。そこで、実際の金額を使って比較してみました。

月給にまとめると損?試算結果を公開

今回は以下の2つのケースで社会保険料の総額を比較してみました。

ケース1:賞与ありのパターン

  • 月給:16万円 × 12か月
  • 賞与:42万円 × 年2回
  • 年収合計:276万円
  • 月額社会保険料(労使合計):46,545円
  • 賞与の社会保険料(労使合計):244,356円(年2回分合計)
  • 年間社会保険料合計:802,884円

ケース2:給与に一括化するパターン

  • 月給:23万円 × 12か月(賞与なし)
  • 年収合計:276万円(同額)
  • 月額社会保険料(労使合計):69,706円
  • 年間社会保険料合計:836,472円

その差額は33,588円。賞与を年2回に分けて支給した方が、会社・従業員の合計負担額は少なかったという結果になりました。

社会保険料は「支給方法」でこんなに変わる

今回の試算では、賞与として支給する方がトータルの社会保険料が軽くなるという結果でした。しかしこれはあくまで一例。給与額、賞与額、従業員の人数や報酬の構成などによって結果は大きく異なります。

社会保険料というのは、実質的には“見えない税金”のようなもので、その支給方法や形態によって大きく変動します。たとえば、報酬を固定給にせず賞与中心にすることで負担を抑えたり、非常勤役員のように社会保険適用を外れる立場にすることで調整を図ったり、あるいはマイクロ法人を設立して役員報酬を最低限にするなど、様々な“工夫”が実際に存在します。

こうした複雑な現状を見ると、「社会保険料の公平性とは何か?」という疑問が湧いてきます。今後、企業の支給形態が柔軟になる中で、保険料の仕組み自体も見直される必要があるかもしれません。

まとめ

賞与を給与に組み込むことは、単に「給与が増える」だけの話ではありません。社会保険料という視点で見ると、実は負担が大きくなる可能性もあります。中小企業では、こうした試算を事前に行い、経営判断に活かすことが重要です。「支給方法の違い」で生じるこのような差に、もっと光が当たってほしいと感じています。

【編集後記】

急に暑くなり、おじさんの身体は悲鳴をあげております(^^♪

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