BEPSから国際戦略トータルプランへ

「ベップス」と読みます。「Base Erosion and Profit Shifting」の略で日本語にすると「税源浸食と利益移転」となります。

で、何のことですか?となりますよね。

簡単に説明すると、各国の税制や国際課税ルールとのずれを利用することで課税を逃れることを言います。

ひと昔前は国際租税回避スキームなんて言われていました。

BEPSとは?

ここ数十年、信じられないくらい経済がグローバル化してきました。そしていわゆる多国籍企業とよばれる大企業は経済活動を行う国とは全く別の国に本社を設置することで、租税を回避するのです。

例えば、「ケイマン諸島」というイギリスの海外領土があります。ケイマン諸島においては、所得や利益、財産、キャピタルゲイン、売上、遺産、相続は非課税になっています。

タックスヘイブンと呼ばれる地域です。このように租税がない国や地域、租税の税率が著しく低い国や地域が世界にはあります。

このような地域を利用して節税するのは、税務の世界ではスタンダードでした。

そしてこのような地域や各国の租税のギャップを利用して本来納税されるべき税金が納められていないという状況が生まれるのです。

BEPSプロジェクト

このように、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題に対処するため、OECDでは平成24年よりBEPSプロジェクトを立ち上げました。

このBEPSプロジェクトでは、 G20の要請により策定された15項目の「BEPS行動計画」に沿って、国際的に協調してBEPSに有効に対処していくための対応策について議論が行われ、平成27年9月に「最終報告書」がとりまとめられました

国際戦略トータルプラン

そして国税庁は2016年に「国際戦略トータルプラン」というものは公表し、税務当局は黙っていないぞ!と宣言したのです。

そしてその内容は

  1. 国際送金等調書の活用
  2. 国外財産調書の活用
  3. 財産債務調書の活用
  4. CRS情報の自動的情報交換
  5. 租税条約に基づく情報交換
  6. 多国籍企業情報の報告制度の創設

1国外送金等調書の活用
国外への送金及び国外から受領した送金の金額が100万円を超えるものについて、金融機関 が送金者及び受領者の氏名、取引金額及び取引年月日等を記載・提出

2国外財産調書の活用
5,000万円超の国外財産(預金、有価証券や不動産等)を有する者が財産の種類及び価額等を記載・提出
正当な理由がない不提出や虚偽記載には罰則適用

3財産債務調書の活用
所得金額2,000万円超、かつ、3億円以上の財産(預金、有価証券や不動産等)又は1億円以上 の有価証券等を有する者が財産の種類及び価額等を記載・提出

4CRS情報の自動的情報交換
非居住者の金融口座情報を自動的に外国税務当局と交換(毎年1回)
日本の非居住者に係る金融口座情報89,672件を58か国・地域に提供した一方、日本の居住 者に係る金融口座情報550,705件を64か国・地域(オフショア金融センターを含む。)か ら受領(2018年10月現在) ⇒当該情報を活用し、海外への資産隠しや国際的租税回避行為をはじめとした様々な課税上 の問題点を幅広く的確に把握し、必要に応じて税務調査を行うなど、適切に対応していく

5租税条約に基づく情報交換
取引の実態、配当や不動産所得等に関する情報を外国税務当局と交換
3類型による情報交換(①要請に基づく情報交換、②自発的情報交換、③自動的情報交換)
租税条約等のネットワークの拡大

6多国籍企業情報の報告制度の創設
総収入金額1,000億円以上の多国籍企業グループが国別報告事項等を提供(2016年4月施行)
2016年4月以降、各国税局における移転価格又は国際課税の担当者が、企業や税理士からの質疑に対応
多国籍企業グループの国別報告事項を自動的に外国税務当局と交換

このような取組を行っており、おそらく相当な情報を入手して対応しているはずです。

まとめ

多国籍企業にとって租税はコストという認識でしかありません。コストを低く抑え企業の競争力を高めるという行為は当然なのかもしれません。しかし、本来納めるべき税金が納められていない(合法的に)というのは、納税者としては納得がいかないのも事実。

元税務職員だからではないですが、頑張っていただきたいですね。

【編集後記】

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