従業員の仮装行為が納税者の行為と同視できるか?

少し難しい話だけれど、どこの会社でも起こり得る話です。

従業員が架空の請求書を作成して架空経費を計上した場合、重加算税が賦課できるか?とうい問題です。

税務調査で発覚する場合があります。

今回は令和元年10月4日付国税不服審判所の裁決を事例に解説します。

事件の概要

会社の従業員が架空の請求書を作成し、その請求書に基づきお金を着服していました。税務調査の過程でこの事実が把握され、会社は税務署の指導に基づき修正申告書を提出しました。税務署はこの修正申告により増加した法人税に対して重加算税を賦課しました。という事件です。/p>

判断のポイント

この従業員が行った架空の請求書を作成したことが、納税者が行った行為といえるか?

【税務署の主張】 従業員による行為は仮装行為に該当し、請求人による当該従業員への管理・監督が十分ではなかったものであるから、納税者の行った行為である

【会社の主張】従業員は、単独で、架空の外注費を計上することで会社からお金を詐取して個人的な遊興費を得ていたものであり、納税者の行為ではない。

それぞれの主張は、税務署は管理監督が不十分である!会社は、従業員単独の行為だ!

さて、審判所の結論は・・・。

審判所の判断

【結論】
請求人による当該従業員への管理・監督が十分ではなかったものと認定したものの、当該従業員の地位・権限や行為態様等からは請求人の行為と同視できないと認定したものである。

税務署の主張を認めつつ、納税者の行為とは同視できないと判断しました。

審判所の判断を整理したいと思います。

審判所は次のとおりポイントを整理してます。

  1. 本件従業員は、請求人の経営に参画することや、経理業務に関与することのない一使用人であったと認められる
  2. 仮装行為は、請求人の業務の一環として行われたものではなく、従業員が私的費用に充てるためのお金を会社から詐取するために独断で行ったものであると認められる。
  3. 会社は、一定の管理体制が整えられていたものの、今回ような詐取行為を防止するという点では、管理・監督が十分であったとは認められない

と、双方の主張を認めています。

そして最後に・・・

職制上の重要な地位に従事せず、限られた権限のみを有する一使用人が、独断で請求人の金員を詐取したという事件の事情に鑑みれば、本件従業員に対する請求人の管理・監督が十分ではなく、本件仮装行為を発覚できなかったことをもって、本件仮装行為を請求人の行為と同視することは相当ではない。したがって、以上の点を総合考慮すれば、本件従業員による本件仮装行為を納税者たる会社の行為と同視することはできない

税務調査の現場では・・・

私が退職した令和元年7月までの話という前提です。

今回の事件同様、管理監督が不十分な場合は重加算税を賦課していました。

個々の事件によってその背景は異なると思いますが、重加算税賦課のハードルは高くなったと思います。

この裁決をもって、税務当局の判断が変わるとは思いませんが、税理士として知っておくと必要がある裁決の1つです。

まとめ

国税不服審判所の裁決事例は下記のリンクから確認できます。

令和元年10月4日採決

業務の効率化の勉強、最新判決事例の研究など学ぶ事ばかりです。

【編集後記】

広背筋の肉離れ、年には勝てない

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